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第20話 涙とキスの責任

Author: みみっく
last update Last Updated: 2025-12-05 06:00:58

 シャルが大きなため息をついた。

「……はっ!? わ、わぁあ、えっと……違うんです。そのですね、わたしの、恩人にですね、少しでも楽しくいてもらいたくてですね、それに向けてですね、頑張ろうかと思いまして……」

 シャルが顔を真っ赤にさせ慌てまくっていた。

「……そっか。シャルは、シャルのままで魅力的だぞ? あぁ……それに、俺は嫁がいるしな」

「へ? ……う、うぅぅ。そうなのですか。ますます、頑張らない……と……あぅ。うぅ……」

 再び顔を真っ赤にさせた。

「そんなに緊張しなくてもいいだろ。相手は、俺だぞ? ま、シャルが俺から離れていくまで、ずっと一緒にいるつもりだからな! そう決めたから追い出すとかないから!」

「……はい。なんと言いますか、責任感で面倒を見てもらうのではなくてですね……その……恋人のように……思ってほしくて……そういうことなのですっ! だめですか?」

 う、うぅぅ。うまく誤魔化したんだが。今度は、ストレートに来たな。

「それって……俺と、恋人になりたいのか……? 歳も離れてるし、歳上への憧れとか、助けた恩を返したいとか……そういう気持ちじゃないのか? 後で後悔するぞ? 多分……」

「歳は、そんなに離れていませんよ? 5歳前後ですよね? 普通じゃないですか。30、50とか離れている方もいますよね? 問題ないです。わたし……人を好きになったの初めてなのです。この想い……伝えたかっただけです。ご迷惑そうなので、諦めます……」

 目をうるっとさせ、涙が落ちる。

 ここまで本気だとは……うぅぅ。正直……これ以上、嫁は……増やしたくなかったんだが。嫁もいることを伝えた。歳の差も。いい子だしな。

 断る……のは無理か。真面目だから思い悩み、出ていきそうだしな。再び、捕まり奴隷として売られる未来が見える。

 立ち上がろうとするシャルの腕を掴んだ。

「あぅ。な、なんでしょうか? もう、大丈夫です……お気になさらずに。孤児の、わたし……のわがままでした」

「俺は、シャルが好きだぞ? ずっとそばにいてもらいたいと思ってるぞ?」

「……ですから、わたしは恋人として……そばに……いたいのですぅ……」再び、目を潤ませた。

「だから、好きだと言っているだろ?」

「それは、わたしを引き止めるためですよね? 好きとは違います」去ろうと振り向き、俺の手を逃れようとした。その手を引くと、バランスを崩し倒れそうになったシャルを抱きしめた。

「…………はぅぅ……」顔を真っ赤にしたシャルが唸り、恥ずかしそうに固まった。

 ゆっくりと顔を近づけ、シャルの真っ赤に染まる頬にキスをした。

「んぅ……い、いま……キスを……? あれ? ユウ様に……キスを……されちゃいましたぁ?」

 目を輝かせ、両手を頬に当てて身体をモジモジとさせていた。

「……恋人になれたのでしょうか……?」

 視線を逸らし、俺の膝の上で聞いてきた。

「やっぱり、嫌だったか?」

「嫌なのは、ユウ様の方じゃ……? わたしは……大好きですっ! もう、決めましたから。お嫁さんに貰ってもらうと。そう、キスの責任を……」

「そうだな。責任を取らないとな〜よろしくな」

「……は、はいっ。 ……夢でしょうか? こんな……幸せでいいのでしょうか?? わ、わぁ……素敵です。頑張って生きていてよかったです。あ、あの……抱きしめても良いですか……?」

 正直、良くない……不味い。だって……間近で、服が濡れて透けている胸に乳首を見て、柔らかい身体と太ももを触っているんだぞ? 美少女の。

「あぁ、良いぞ。ミレディに見られてしまうから、手短に頼む」

「あ、はい。……んっ……ぎゅぅ♡」

 おい、それ、反則だろ。声で言うなぁ。可愛すぎだろ。

「……ゆ、ユウ……くん……何してるのぉ? シャル……ちゃん!? ふぅーん……。へぇ〜……二人、そういうカンケーなんだぁ……? わたし、仲間はずれ……なんだぁ?」

 川の方を警戒していたが、岸に上がり歩いてきたらしい……これ、想定外な展開だ。

「わ、わたし、頑張ったの! ミレディさんも頑張って! あ、わたし、魚を焼いてるね? ……ぎゅぅ♡」

 シャルは、俺を抱きしめるとテントのある方へ向かった。

 逃げたな……シャル。

「ユウくん……どういうことぉ? わたしの方が……先に知り合ったのにぃ!」

 頬をぷくぅと膨らませて文句を言ってくる。

「ミレディは、その、男に嫌な思いをさせられただろ? ちょっと……気を使うだろ? 男に抵抗あると思って控えていたというか、そ、そう、我慢していただけだ!」

「ふぅーん……我慢しなくて、いいよぅ? ユウくんに、嫌な思いをさせられたわけじゃないしぃ……」

 ま、シャルと付き合うなら、ミレディも来るような気がしてた。というか、話を聞いていたからな。

「俺で良いのか?」

「ユウくんが、いいのぉ! ユウくんじゃなきゃ嫌ぁ。ムリぃ……怖いしぃ、抵抗あるぅ……。ユウくんは、抵抗あるぅ……? 他の男の人に……エッチされちゃった……わたしにぃ……」

 久しぶりに見たミレディの、暗く辛そうな顔。

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